プロジェクトについて
「このプロジェクトは、コロナが収まりかけてた頃に新しくはじめたプロジェクトの一つなんです。覚えてますかその頃のこと?まだマスクしなきゃならなくて、ソーシャル・ディスタンスもあって、なるべく話さないようにっていう。少なくとも日本ではまだまだそんな時期だった。いろんな意味で、社会全体が文字通り押し黙らされた状態だった。多分ほとんどの人達にとっても同じような影響があったと思うんですけど、私も身体的な影響を相当に感じていた。コロナ以前にも「声が奪われた状況」っていうのは、メタフィジカルな意味でもね、わりとずっとあったと思うんですけど、コロナのせいで実際に声が出せなくなって、ある意味でそういうこともより一層明確になったというか。
だから、もしかしたら、ずっと前からやりたかった「声」によるプロジェクトを何かしら形にするにはいいタイミングなのかなって。コロナ的な状況に抗うっていうよりも、むしろ何とかサバイバルしようっていう本能的なアクションというか。つまり政治的なスタンスとかではなくて、切実な祈りのような、願いというか。どんどんとお互いの距離や関係性が遠のいていく、そういう世界に対する呼びかけというか、何かしら励ますような・・・。」
NEVER BE NO VOICE - a reflection on a collective voice, 2023"より翻訳し抜粋(原文英語)
「寄り合うこと(コレクティビィティー)」や「声」に関する実践的リサーチ・プロジェクトである「声を挙げ、絶やさない」は、出来るだけ柔軟な思考と聴く耳を持った様々な人達からなるグループを作り、設定されたセッション期間の間にテーマに関する考察や議論を行う。と同時に、グループとして「声を挙げ、絶やさない」=なるべく長く残響する「コレクティブな声」、というものを模索し、実現のための練習を考案し、実際に実験する
即興的なセッションを元にするプロジェクトの性質上、その結果もオープンな行方に委ねられる。例えば「声」そのものの定義に関しても、各人の声帯で作られた音という一般的な理解の範囲に縛られる必要はなく、各人の考え・心の声、手話などでもありえる。最終的に何かしらをアウトプットするが、その形は、セッションごとに集まった人たちの特徴や人数、セッションの回数、セッション中に生まれて来たアイデアなどにより、コンセプト、形式、政治性、アート性、音楽性、その他の考えうるあらゆる方向性に関して影響を受けることになる。これらのセッションは、グループ間で互いの考えを聴くこと、声を重ねることを通じた考察であり、声や声にまつわるユニークな性質に関する非典型的で即興的なリサーチと言える。プロジェクトとしての関心は、 最終的なアウトプットの構成、音楽性の優劣といった既存の尺度で捉えられるものにはなく、リスニングや声といった音にまつわる行為や関心から果たして何かを「知る」ことができるのか、グループとして共有した時間や経験が生み出す響き、その只中で身を震わせつつ、まさにそのことを感じ得るのかどうか、可能であるとすれば、果たしてどういう可能性が生まれるのか、という点にある。
SESSION 1: 06.08.2021 - 13.09.2021、名古屋
セッション内容:ワークショップ、リスニングのための自習課題、呼吸法のためのビデオ、ディスカッションの時間、簡単なリハーサル、パフォーマンス/撮影
声: mamoru、平山 亮太、武田 萌良、畑中 未羽、細江 波瑠、松田 直子、工藤 彩加、福田 柊、和田 佳己、宮向井 奈桜、早川 龍之介、中村 綺良、大嶽 涼太、ドット マルコ、瀬古 亮河、山本 将吾
キュレーター:西田 雅希
制作:市川 岳志、市原 萌絵、山本 マヤカ、磯部 絢子
撮影:冨田了平、大野高輝
録音:冨田了平、大野高輝、mamoru
編集:冨田了平、mamoru
企画:名古屋芸術大学 芸術学部 美術領域
主催:名古屋芸術大学 Art & Design Center

ACT1: 声を挙げ、絶やさない/NEVER BE NO VOICE, 13.09.2021
(パフォーマンス/撮影セッション)
記録映像, 15'13": https://youtu.be/7yv0vsl29QA
ACT1のインストラクションより
第一部 [育てた声を持ち寄る]
朝起きて、最後の呼吸法と「チューニング」を行う。
集合地点までチューニングした音・声に集中し、
それぞれが育てた声を持ち寄る。
この間ずっと、誰とも話さない。
[育てた声を小さく挙げる(何度も何度も)]
合図の後に、集まった人たちそれぞれが声を小さく挙げはじめる。
なるべく長い息を使いながら、何度も息継ぎをしつつ声を挙げる。
note:
それぞれが育てた声は、
次第に、反発し、混じり、干渉し、吊られてゆくでしょう。
それでもそれぞれが育ててきた「わたしの声」を挙げ続けること。
[互いの声を聴き、わたしたちの声をつくる。(歌は生まれるだろうか?)]
合図で「わたしの声」から「わたしたちの声」という意識に切り替える
自分が育ててきた声を保ちつつ、
声がまとまろうとする動きを感じた場合には合わさっていく。
とにかく発声をやめない。
note:
誰かが興奮して「声を踊らせる」かもしれない。
それに触発されて他の誰かも【声を踊らせる】かもしれない。
声がまとまってきてグループが生まれるかもしれない。
[沈黙に声を還す]
合図でボリュームを最大にしていく。
次の合図で全ての発声をとめる。
残響に耳を傾け、余韻が消えていく様、
そして声が沈黙に還る様を聴く

ACT2:東へ、声を運ぶ/TO THE EAST, CARRY YOUR VOICE, 13.09.2021
(パフォーマンス/撮影セッション)
記録映像, 18'52": https://youtu.be/ecgUIM84z9g
ACT2のインストラクションより
参加者全員で「東へ、声を運ぶ」方法、
ルートを話し合い、決定し、実行する。
note:
西キャンパスのADギャラリー内で、まず「声を挙げ」
東キャンパスのADギャラリーまで徒歩で移動する。
東ギャラリー到着後、合図の後に、
参加者ひとりひとりが最後の息で声を出しきり、
ブレスアウトしていき、終了。
intersession/reflection

NEVER BE NO VOICE - a reflection on a collective voice
(ステレオ、14'55"、2023) 作品を再生する/Youtube
LISTENING BIENNIAL 2023のために作られたアーティスト本人のモノローグとサウンドスケープによるオーディオ作品(言語:英語)
intersession/field work

FIELDNOTES/「声」は領界のマテリアルかもしれない、という理解
(テキスト、日本語、2025) /タイトルをクリックしてテキストを開く
2023年10月25日、台湾、台東縣、達仁郷、土坂にて行われたTjuwabar Maljeve*に参加した際に得た「声」に関する思索
*台湾原住民族の一つであるパイワン族の部落ごとに五年に一度だけ開催される神聖な祭。
祭りの雰囲気:最後の場面を含む10分くらいの映像:YouTube
SESSION 2: 15.05.2024-17.05.2024、シュチェチン(ポーランド)

ディスカッションの様子
セッション内容:Hong-Kai Wangとの協働ワークショップ"wind is a voice and voice is the wind"(三日間)にてリスニング、呼吸法、想像のエクササイズ、ディスカッションの時間、発声のエクササイズなどを行った。
キュレーター:Tien Zong-Yuan, Nicole Lai, Karolina Bregu?a, Marta Gendera
制作:Peichun Lai
企画・主催:Amongst the Silence, Lokatorne
グループワークの様子
SESSION 3: 20.04.2024-10.08.2024、香港

声を繋ぐグループワークの様子
セッション内容:香港を拠点にする打楽器音楽家集団Toolbox Percussionの打楽器奏者達との協働ワーク。現地での合計4回のグループ・セッションとそこに至るまでの3か月の準備期間を使った声と打楽器のみで作られるパフォーマンスを構想・実験する試み
キュレーター:Louis Siu
声・打楽器:Abby Chan, Ivan Yeung, Hon Yi, Betty Fung, Louis Siu, Howard & Rita, Siu Yi, Cyrus Yim, Kian Hsu, King Lam, Colin Chow, Alvin Chan, Cherry Cheng, Hoi Lei, Kartis Chen
企画・制作:Toolbox Percussion
撮影・音響:Krystle Leong, Ash Yeung, sound techs, JPL documentation team
主催:Oi! art space, Toolbox Percussion



公開セッションの様子
intersession/field work

FIELDNOTES/「声」は確かにそれらを振るわせ育む(上方系のエネルギーになり得る)のかもしれない
(テキスト、日本語、2025) /タイトルをクリックしてテキストを開く
2025年5月23日、台湾、台東縣、海端、霧鹿にて行われた射耳祭*にて行われた声による祭祀Pasibutbutを体験し得た「声々」に関する思索
*台湾原住民族の一つであるブヌン族の部落ごとに毎年開催される狩猟祭
SESSION 4: 24.05.2025-22.06.2025、鳥取

ワークショップの様子
セッション内容:鳥取県立美術館で開催予定のCONNEXIONS展の関連事業として、鳥取県内8ヵ所にて9回のワークショップを開催。内容は2日間(一日目が3時間、3週間後に二日目2時間)にわたって呼吸、リスニング、想像、発声のエクササイズを行い、その様子を録音・撮影。
ワークショップ中に録音されたSESSIONより
2025.05.27. 浜村、喫茶ミラクル
2025.05.29. 智頭、ほのぼの
2025.06.16. 大山、ガガガ学校
2025.06.22 鳥取、HOSPITALE
キュレーター:赤井あずみ(鳥取県立美術館)
撮影:直江竜也/noet photo visual
録音:mamoru, 直江竜也/noet photo visual
主催:CONNEXIONS 展実行委員会





鳥取県内各地でのワークショップの様子
FIELDNOTES/疲れない、どころか元気になる/振動コミュニケーション/子音の「発見」、からの音声学への興味発生/人数
(テキスト、日本語、2025) /タイトルをクリックしてテキストを開く
上記のSESSION4及び下記のSESSION5から得た幾つかの考察、思索ノート
SESSION 5: 11.06.2025、東京

ワークショップの様子
セッション内容:多摩美術大学彫刻学科基礎演習「実存実習」の一環として企画され、全学公開授業として呼吸、リスニング、想像、発声のレクチャーとエクササイズなどを含む3時間のワークショップを行った。参加者は約50名。
企画:多摩美術大学彫刻学科(担当:高嶺 格、三宅 感)
主催:多摩美術大学彫刻学科
intersession/field work

FIELDNOTES/13万人の声々が重なり、また「再会」する
(テキスト、日本語、2025) /タイトルをクリックしてテキストを開く
2025年7月5-6日、エストニア、タリンにて19世紀より5年に一度開催されてきた国民的ソング・セレブレーション「Laulupidu」に参加・体験し得た「声々」に関する思索
SESSION 6: 23.08.2025、ジョグジャカルタ、インドネシア

イベントの様子
セッション内容:画家の横内賢太郎が2015年にジョグジャカルタにて設立したArtist Support Porject *の10周年を記念する展示オープニング時にその場に集まった来客達と即興で「声を挙げ」るパフォーマンスを行った。参加者は約40名ほど。
このときの様子はこちらの【YouTube動画】からご覧になれます
*ASPはアーティスト・ラン・スペースとして、主にレジデンス、展覧会、ジョグジャカルタの若いアーティスト達の発表機会を提供したり、ビジターとしてリサーチや制作を行うアーティスト達のサポートなど多岐にわたる活動を自主運営している。
企画:ASP、mamoru
FIELDNOTES/ある「ひとつの声」とその10年分の反響(のほんの一部)にまつわる思索
(テキスト、日本語、2025) /タイトルをクリックしてテキストを開く
上記のSESSION 6に関する思索
intersession/reflection

ハミングとは(ある種の抵抗?または戦術となり得るかもしれない)?
(テキスト、日本語、2025)
2025年10月時点での「ハミング」に関する考察、思索ノート
|