THE WAY I HEAR, Fuchu 2012-2013  / 府中市美術館 公開制作57



公開制作     リスニング     リサーチ     パフォーマンス     リーフレット



2013年2月16日 テキスト、パフォーマンス録音より書きおこし

出演/m: mamoru、H:橋本耕平(オーディオオペレーション)、O:小野田藍、A:光門映恵
略号の説明/「WB:ホワイトボード、「+」:上の分と同時又は重なって発話されている事を表す



m(mamoru):
皆さん今日は たくさんの方にお集まり頂きましてありがとうございます。mamoruと言います。
上の展示は皆さんご覧になりましたでしょうか? 上で見せている作品はですね、日常のための練習曲と言うタイトルで、シリーズでずっとやっているんですけど、この五年くらいちょっとずつ形をかえやってるんですが、今日は・・・

<WB(ホワイトボード)中央付近に書き込み>
THE WAY I HEAR, Fuchu 2012 -

performance view
excerpt from video: Lee Basford

m:THE WAY I HEAR という、訳しますと私のききかた、みたいな感じなんですが、上の作品に関して言うと、聴き方は耳をそばだてる、小さい音を聴く、そういうところがあると思うんですけど、またそれとは違う種類の音だったり、違う種類の聴き方というのを、今回三ヶ月、実際は、僕はその1ヶ月前から居たので4ヶ月なんですけど、この府中市美術館で公開制作ということでやらせていただいて、その間にこういう聴き方もあるな、こういう聴き方もあるな、と言う様な事を考えながら、やってきたんですけど、その辺を皆さんにご紹介出来ればな、と思っています

音の種類とか、聴き方とか言われても、パッと、ピンと来ないかもしれないんですけど、例えば・・・(スタッフ)

<A(光門):スタジオにある水道の蛇口をひねり実際に水の音を響かせる
はじめ蛇口を全開にひねる、その後に半分くらいに閉じ、流し続ける。>

m:これ当然聞こえますよね?いまは耳を使って聞いたわけですけども、何の音ですか?

客:水の音?
m:水の音 <WBの上、左に書き込む>
m:なんか他に言い方あります?
客:蛇口
m:蛇口の音 <WBの上、左に書き込む>
どうですか?え?
客:シュー、ジャブジャブジャブ・・・
m:あー。ジャブジャブジャブ。オノマトペ的なね。(笑)
他に何か言い方ありますか?
客:建物の中をながれる音
m:建物の中を?流れる・・・ちょっと長いので(笑)書くには長いかな。ありがとうございます。なんかありますか?他に言い方?
単純に、例えば、水の流れ、とか、水、だけでもわかったりするかな。
<WBの上、左に書き込む>

<A:蛇口を閉じる>

m:上で聞いてた音、この音<m:流しの方向を指差す>、ひとつ僕の中では同じ種類の音、でこれも・・・
<m:カツカツカツ、とブーツをならしつつ部屋の中を少し歩く>

これはまぁ、足音<WBの上、左に書き込む>ですね、これも他に言い方はあると思うんですけど、とりあえず。
これも同じ種類の音。じゃあ例えば・・・

<O(小野田):スタジオの入り口のガラス製の重いスライドドアをガラガラと開け、閉じる>

はい。これも同じ音。

<A:足音をきっかけに電気ケトルのスイッチをいれていたためお湯が沸騰してくる>

聞こえてきましたね、何か。<耳に手をやりリスニングの格好>
わかります?

客:沸騰の音?

m:これこないだやったときは、全然その日とわからなくて「えっ?ラジオ?」とか(笑)水やってるんでね、自然な流れで、そうです、いまお湯をわかしてもらったんですけど。ここで発生している音ですね。
<お湯をわかす、WBの上、左に書き込む>お湯自体に音があるわけではないんでね。これも同じ種類の音なんですけど、こういうのを、一応今日は、ざっくり「生音」<WBの下、左に書き込む>と呼びたいと思います。

生の音、その辺で発生した音
じゃあ生音に対してこういうのはどうですか・・・

<H(橋本):4chサラウンド音源再生/大国魂神社の録音>

これはまた、これですよね<WBの「足音」を指す>
他に何か聞こえますか?<耳に手をやりリスニングの格好>

客:ゴーっていう空気みたいな音
m:あーーー。すごいとこ聞きましたね。もうちょい聞こえやすい音もあるかと思うんですが。空調ね。空調<WB上、左に書き込む>、確かに。これはおもしろいな。

(ガラス戸の向こう側でずっと子供がぐずって泣き叫んでいる声が聞こえている)

むこうで叫んでるのは仕込みじゃないですよ。(笑)あれはハプニングです。

他に何か聞こえますか?
<録音:パンパン>
あ、なんですかこれ?
<録音:パンパン>
客:柏手。<WB上、左に書き込む>
m:柏手。という事は・・・ここは恐らく?
客:あー神社!
m:日本人ならたぶんわかる。大国魂神社という近くに、近くにというか、駅の近くにあるんですけど。そこで録ったんです。
こういうのは「録音」<WBの下、中央に書き込む>。いまはとりあえずそう言う風に呼んでおきます。

ただですね、例えば・・・こう・・・
<m:パンパン>
ここは神社じゃないんで、これが柏手なのか手拍子なのか、むずかしいところですが、書いちゃうと一緒ですよね?
さっきのもこれ<WBの足音を指す>は録音でもあったし、生でもあったし・・・

これ<WBの生音をさす>を・・・
機械を、マイクとか、操作して録音するんですけど、それを操作すると録音は再生される、
同じ図式でいくと、生音は・・・
ちょっと漢字ばっかりで・・・笑・・・申し訳ないですが・・・
例えば歩くとか、水が流れるとかっていうこう・・・水が流れるは違いますね、足音とか「行為」<WBの下、左に書き込む>ですね、行為って言うのは、また漢字ですが、「実行」<WBの上、左に書き込む>することで音が生まれる。
例えばお湯が沸く。こういうのは行為じゃなくて「現象」<WBの下、左に書き込む> この辺聞き流して下さいね、そんなに重要じゃないです。(笑)
現象は「発生」<WBの下、左に書き込む>すると音がでる。爆発とか。
昨日のあの隕石のニュースとか見ました?(ロシアで確認された隕石落下のニュース)激突して、あれは現象っていうのかどうかわかりませんが、あれも爆発して音が聞こえる。すごい音だったんじゃないかなと思っておもしろがって見ていたんですけども。

では・・・<WB上、右あたりに以下を書き込み始める>

performance view
photo: Lee Basford

WB:これはどうですか?<客席へ顔をむける>
何か聞こえませんか?<客席へ顔をむける、耳に手をあてるしぐさ>
この文章を読む時に <上の行にむけて矢印をひく=何か聞こえませんか?に下線、客席へ顔をむける>
頭の中で<上の行にむけて矢印、何か聞こえませんかを指す、WBを消す>
では、「アーーーーーーー」と言って下さい。<客席に顔をむける>
客:「あーーーー」
WB:いやいや頭の中で。
客:(笑)
<m:指揮者の様に身振りで歌う指示、手で音をひっぱるしぐさ、少しして、手を閉じて終わらせる>
WB:低い「アーーーーー」(同様に、身振りで指示)
高い「アーーーーー」(同様に、身振りで指示)
もっと<上の行の 高い「アーーーーー」の手前に書き加える、同様に、身振りで歌う指示、手のひらをあげることで、音程を上へ上へとひきあげる>

<m:身振りと、WBに書かれた文を指し示す事で、会場の左半分に低い「アーーー」を、右半分に高い「アーーーー」を割り振る。指揮者の身振りで歌う指示、音をひっぱり、終わらせる)”

m:きこえました?

それと同じかどうかはわかりませんが・・・
<m:WB上、左に書いてあった「水の流れ」を赤ペンを使ってかこみ、指で指ししめし、耳に手をやる>

m:きこえてきました?

これも、なんて呼ぶかはわかりませんが・・・「音」<WB下、右に書き、丸で囲む>、だとしてみよう、というのが私の聴き方です。
いま、この図式でいいますと、これはなんでしょうね? 文字ですね。「文字」とか「記述」<WB下、右に書く>でいいと思うんですけど、それを、どうしました? それを・・・

客:イメージする?
m:イメージ、そうですね、ここに<WBの「音」の下辺りを指して>イメージって言うのがあると思うんですが、それをやるためにまず、皆さんこれを・・・
客:読む
m:そうですね、皆さんまず読みましたよね。それで音が鳴る、こういうことってあるんじゃないかな。
じゃあ、こういうのがちょっとあるんで見て貰っていいですか・・・

<A+O:配布物1/リスニングメモを配る>

2011.10.06 15:19-27

教会近くの Cafe KINH DO にて

・後ろから女の子たちの話し声
・すぐ隣からフランス人旅行者の会話
・通りで学生同士 呼び合う声
・目の前の男性がジョークを言い、笑っている
・カフェ店員がプラスチック製の椅子を動かす音
・店の冷蔵庫の音(継続音)
・女の子たちがひまわりの種をわりつつ 食べている
・バイクや車のクラクション
・自分の椅子を動かす
・新しく入ってきた客が 既にいた友人に挨拶
・小学生(?)が走り回っている
・誰かがバイクのエンジンをかける
・後ろの方で店員がコーヒーカップを洗いはじめる

<英語原文>

2011.10/06 15:19-27
Cafe KINH DO near the church
I hear…
・girls chatting in the cafe behind me
・French tourists chatting in the cafe next to me
・Students calling each other on the street
・men making jokes, laughing in front of me
・a cafe worker pulls the plastic chairs
・big refrigerator of the shop (continuous)
・girls eating the sun flower seeds breaking
・horns of the motorbike and cars
・I move my chair a little bit
・new customer making their order and greeting their friends who were already there
・some students (elementarily school?) running around
・someone put his engine of the bike on
・a cafe worker starts to clean some coffee cups in the back」

m:たぶん1、2分で、聴く事ができると思いますが・・・字が汚いのはご容赦いただいて・・・
聴こえてきましたか?もしくは何か、どんな印象ですか?カフェって書いてあるので、カフェはカフェなんですけど
客:なんかあの、音も出てくるけど、絵が浮かびます
m:そうですよね、イメージしてきますよね。どういう場所だろうな?音に限らず何かありましたら。
客:なんか、こう陽当たりがありそうで、あまり実はない(笑)、のどかな感じ
m:のどかな感じ、なるほど。他に何かありますか?
客:自分はひとりでいるのかな?とか・・・
m:あーなるほど。そうですね、どこに視点をもってくるんだろう、というのは、人によってかわってきますよね、(メモを書いている人の事を指して)この人なのか、それをまた見ている人なのか(いまそのメモを読んでいる自分なのかを指して)

performance view
photo: Lee Basford

m:実はこれは、私が2011年にベトナムのハノイという街に行った際に、よく行っていたカフェで7、8分で書きとめたメモなんですけども。それを皆さんに読んで頂いたということなんですけど。中には外国っぽいなっていう人が、教会って言う文字からそうかなとか、フランスですか?とか、書いてない事はたくさんあるんですけど。

m:これも<WBの文字/読む/音の部分を指す>、音、的な、音の様な、イメージと先ほど仰ってましたけど、そういうのを感じられる1つの例じゃないかな、と思うんですけど。
府中でもですね、こういう感じで<画像を貼った壁を指し示す>、これ私が行ったところなんですが、行ったところの画像からパシャッと撮ってるんですけども、こういう場所に行って10分間、そのメモと同じ様に、箇条書きの様なメモだったり、あとは地図みたいな形、この辺でなっているのがきこえるとか、2タイプあったんですけど、
その際に、さっきみたいに、ただきくだけ。目で確認しない。耳で理解した事を、ただ書き付ける。それが2人だなーとおもったら、見て2人というのを確認せずに、2人とかいちゃう、2人の人が通りすぎる。そういうのをひとつのルールにしながら、リスニングリサーチということでやってみました。
1人でやったわけではなくて、武蔵野美術大学の学生何人かに手伝ってもらって、その時に、お互いのメモを交換したりしてですね、そうすると相手がきいていたものというのを追体験することもかのうじゃないかな、ということだったり
そこから発生した、これはちょっと見づらいかもしれませんが<WBに新町の三叉路画像(画像01)をWB真ん中左付近に貼付ける>、ちょっとした遊びで、じゃあもう行かなくても、どっちみち想像だったら、これを見てももうきこえるんじゃないかな?

m:なんて事はない場所ですけども、どんな音をきこえると思いますか?
どうですか?
客:どこかでバイクか、自転車が通っていく
m:うんうん、ここの通りかもしれないし、向こうかもしれないし、
客:人の話し声
m:人の話し声
客:鳥
m:あ、鳥。確かに。
と、まあ、たぶん、こう言っている間にも、どんどん、こういうのもあるな、こういうのもあるな・・・
これは、いま画を<WB下、右に書き加える>画像ですけど、画を・・・
客:視る?
m:視る<WBに下、右に書き加える>ことで、きこえたのか、見えたのか、感じたのか<「音」辺りを指差しながら>
実は、もう1個<WB下、右の「音」を指差しながら>もう1つの方法で、始まったときから音を聴き続けてたんですけど、お気づきになりましたか?

m:さっきなんておっしゃいました?<客を指差して>
客:鳥?

客:カラス?
m:カラス!?笑
客:カラス鳴いてなかった?
m:あー。カラス鳴いてましたね、それもハプニングです。笑
客:仕込みかと・・・
m:そうなんですよ、全部仕込みかなって思っちゃうんですよね。笑。いいですよ皆さん。笑

m:鳥っておっしゃいましたね、その前になっておっしゃいました?なんておっしゃいました最初に。
客:バイクか自転車が通る音・・・。
m:バイクか自転車が通る音、いまきこえました?
もちろん、これ見てるんで<WB画像指す>、そういう音きこえてたかもなっていうのはもちろんあるんですけど、
いま仰った瞬間に、鳥って仰った瞬間に、どっかで、「あーなんかが鳴いたかも」
バイクか自転車が通る音って仰った瞬間に再生されませんでしたか?
そういうのを、この並びで言うと、「口述」<WB下、右に書き込む>とか人の話し、を、きくことによって、きくというのは2つあるんで両方かいときますけど、<「聴く/聞く」WB下、右に書き込む>
きくことによって、「音」が再生される<「音」指差す>

このきく、この音(「音」)、この音(「録音」)、この音(「生音」)<WBを指差す>、このへんを今回僕の中では音という風に、大きくとらえて、それを1つどうやって紹介しようかな、と考えながら、こんな事を考えてみました。

<譜面台をとりだす。部屋の明かりが落ちる、ステージにスポットのみ>

performance view
excerpt from video: Lee Basford

m:

「2012年11月7日(水)晴れ、微風、おだやかな秋の日差し
12時36分リスニング開始
すぐ後ろで 木から何かが落ちる音
目の前のしげみから ジィージィージィーという虫の鳴き声
辺り一面で 鳥の鳴き声
近くで ひときわ大きく鳥が鳴く
目の前を 虫が横切る
遠くで 来るがま行き交う音
すぐ後ろを誰かが横切る
少し離れたところで 鳥がガサガサと動いている
丘のふもとから "トラックがばっくします"という機械的なアナウンス
上空高いところ 飛行機がゆっくり通過
離れたあたりから 子供の遊ぶ声
丘のふもとから クラクション
低空で 飛行機の音 / 次第に遠ざかる
離れた辺りから 子供の笑い声
上空どこからか ヘリコプターが近づいて来る
すぐ後ろで 何かが落ちる
目の前のしげみで 虫が泣き止む
どこかで ひよどりのキィーキィーという鳴き声
風が樹々をゆらす
12時47分 リスニング終了」

m:ここから少し、あっちの方なんですけど、行ったところに・・・
<WB上、右に「浅間山」と書き込む>・・・という山があります。
府中市内で最高峰の山でして、と言ったらすごい高い山をイメージしましたよね知らない人は、たった80mなんです、笑、しかもですね あさまやま じゃないんです。知っている人はあたりまえすぎて笑えないかみしれませんが、せんげんやまって読むんです。僕も最初 あさまやま って呼んでいて話しが食い違うな、って思ってましたけど。
その浅間山、ただ高いだけじゃなくて、高くはないんですけど、府中の中では高いんですね。結構古いんです。どのくらい古いかといいますと、大昔、この辺、古多摩川というのが流れていまして、それの堆積で武蔵野段丘というのが出来て、地形の話しちょっとなってますけど、だいたいそのへんの地層がでるんですね。この辺り。
ところが浅間山はもっと古くて、古相模川という、さらにそこから数十万年前遡る、流れてたんですけど、それの地層がでるんですね。だから浅間山というのは昔から、あそこに、相当昔からずっとある、様です。

結構よく知ってるでしょ?(笑)あさまやまと呼んでた割には。(笑)

僕はですね、この<WBを指す>、こういうリスニンング<WBの 文字/読む/音 を指す>を、あそこにあるのは本の一部ですが<ガラスケースを指す>、いろんな資料をですね、ページをめくって<身振り>、「音」に聞きいったんですね<リスニングポーズ>

performance viewphoto: Lee Basford

これがせんげんやまって読むのもわかって、地層がどうのっていうのもわかってきて・・・それで、もう少しいろいろ調べていくと、そういう府中本って言うのはあんまりないんですけど、府中の本、必ず浅間山が出て来るとキーワードで<WB上、右「武蔵野」書き込む>こういうのが出てくるんですね。
これを見てイメージ出来る人というはこの辺りの人かなと思うんですが、僕は生まれもともと関西なので「武蔵野」っていわれても、武蔵はなんとなくイメージ出来ても、武蔵に野がつくと、ちょっとよくわからない。それでGoogle検索したり、本を読んだりして、こういうのを見つけたんですけど。また皆さんにも、読む様な、聞く様な・・・

<A+O:配布物2「武蔵野」抜粋プリント配布する>

「武蔵野  国木田独歩
自分は十月二十六日の記に、林の奥に座して四顧し、傾聴し、ていし 睇視し、黙想すと書いた。「あいびき」にも、自分は座して、四顧して、そして耳を傾けたとある。この耳を傾けて聞くということがどんなに秋の末から冬へかけての、今の武蔵野の心に適っているだろう。秋ならば林のうちより起こる音、冬ならば林のかなた遠く響く音。
 鳥の羽音、さえず 囀る声。風のそよぐ、鳴る、うそぶく、叫ぶ声。くさむら叢の蔭、林の奥にすだく虫の音。からぐるま 空車荷車の林をめぐ廻り、坂を下り、のじ野路を横ぎる響。ひづめ蹄で落葉をけち蹶散らす音、これは騎兵演習の斥候か、さもなくば夫婦連れで遠乗りに出かけた外国人である。何事をか声高に話しながらゆく村の者のだみ声、それもいつしか、遠ざかりゆく。独り淋しそうに道をいそぐ女の足音。遠く響く砲声。隣の林でだしぬけに起こるつつおと銃音。自分が一度犬をつれ、近処の林をおとな 訪い、切株に腰をかけてほん書を読んでいると、突然林の奥で物の落ちたような音がした。足もとにていた犬が耳を立ててきっとそのほうを見つめた。それぎりであった。たぶん栗が落ちたのであろう、武蔵野にはくりのき 栗樹もずいぶん多いから。」

m:また1、2分読んでもらっても良いですか、ざっくりで構わないので

これは1898年に書かれたもので、国木田独歩、名前ぐらいは聞いた事がある、読んだ事がある、様々だと思いますが、武蔵野というそのままずばりのタイトルのエッセイがありましてそれの抜粋です。
何が魅かれたかというのは、読んで頂いてすぐわかったかと思うんですが、国木田先輩はですね(笑)、まさしく似た様な事をやっているわけですよ、というより僕が似た様な事をやってるわけですが。(笑)
「あ、なんだいたんだ」というか「そりゃいるわな」と思いましたけど、ここまで克明にですね、知りたい様な事を書いている文献というのは、そうとう目を通しましたけど、ないです。ただ残念な事に、もしくは都合の良い事に、この武蔵野がどこだかわからない。武蔵野って、もういわゆる関東、広く、先輩の時代はですね、渋谷でも武蔵野って行ってたくらいで、渋谷にすんでらっしゃったんですけど、その近所じゃないかっていう話しとか、いやいや小金井じゃないか、おそらく自分のふるさとにもってきたいもんだから、いろんな諸説あるんですけど、定かではないんです。なので、浅間山でもいいだろう。(笑)
1898年頃、こんな音がなっていたのかな、なんて言う風に想像したわけです。

もうちょっと、いろいろリスニングを続けていくと、ページをめくり<身振り>
私はもう1人、宮本常一という人に出会いました。出会ったといっても、彼が撮った写真。<WB上、中に浅間山画像(画像02)貼り出す> 彼が書いた文章。そういったものから、また、音をきいたんですけども。
宮本常一という方は民俗学者で、私の日本地図という大著書があるんですけども、要するに日本中あっちこっち歩き回って、誰も気に留めない様なものにカメラをむけて、本当に何を撮ったのかわからない様な写真が膨大にある、というそういう方なんですけども。1961年に実は府中市の、北端の方なんですが、引っ越してこられて、その後20年間、府中に住まわれてたんですね。その当時、武蔵野美術大学で教えておられて、と言っても、いま私の日本地図と言いましたけど、しょっちゅういろんなところにいかれてたので、帰って来る家という様な感じだったみたいですけど。その私の日本地図にですね、こういう一節があるのでお読みしたいと思います。

m:

「国分寺駅へおりて南口に出て
しばらく南へゆき左へ折れると
ケヤキの並木道があって 大きなケヤキが枝をはって茂っており
両側には新しい住宅もあったが
草葺きの農家が何軒も並んでいて
ほんとに田舎に来たという思いがした
そのケヤキ道から右へそれて少しゆくと麦畑になっていて
ヒバリが空にさえずっていて。
その畑のむこうに二、三軒家がたっており
その中の一軒が売りに出されていた」

m:この売りに出されていた一軒というのを彼は買いまして、さきほどちらっと言いましたように20年間、1981年までこの辺でうろうろ、たまにうろうろしていたんですね。
ちなみに、いま読んだルートですね<壁に貼ってある地図を指して>、これは府中市のマップですけども、ご存知の方も多いかもしれませんが、府中市は多摩川にそってあって、その北側に国分寺市があって、こっち側が小金井市なんですけど、国分寺の駅がここです・・・<地図上の位置を指す>

<H(橋本):「国分寺駅」をきっかけに国分寺駅4chサラウンド録音再生>
<O(小野田):前へでてきて譜面を用意>

そこから、いまので言うと、南へ下って、左へ曲がって、たぶん「このへんにけやきがあったんだろうなー」なんて思いながら下って、この辺今は住宅街ですけど、「麦畑だったのかなー」なんて思いながら、三市がまたがっている辺りが新町、彼はここにすんでたんですね。

+O:国分寺ー新町/朗読(mamoru の説明と重なる様にして語り始める)

「12月下旬の祝日だけあって、ここ国分寺駅の人通りは多い。
改札脇には年賀状を売る露店が出ていた。
私たちは駅を出て南へ向かう。
急な坂を下り、小さな川を越え、三つ目の角で路地を左に入る。先ほどまでとはうって変わって車の音はもう聞こえない。
住宅が立ち並ぶ辺りを10分くらい歩くと、宮本常一が書いていた様な大きなケヤキが少しばかり残っているところが目に入る。
しばらくいくと、探していた小さな商店街があり、古い写真にも写っていた三叉路が目の前に現れる。
宮本常一の当時の住まいを求めて、私たちは近辺をうろついてみたが、見つけられず
少し言ったところの団地わきのベンチでしばし休憩をとることにした。」

performance view
excerpt from video: Lee Basford

m+O:


m:2012年12月23日日曜日 くもり、微風、辺りは冷え冷えとしている 11時7分リスニングスタート
m:すぐわきの通りを 車が通りすぎる
m:近くから 鳥の鳴き声
m:離れたところから 男性の"おはようございます"、"失礼しまーす"という声が響く
m:11時10分 少し離れたところで 車のエンジンがかかる
O:近くで"ピーッピーッピーッ"と車がバックする
m+O:目の前を 車が横切る
m:その車が停止し ドアが開き、閉められる

O:上空で ときどき鳥の声が響く

m:11時11分
m:すぐ近くから 掃除機の音、"ガタガタ"と戸が開いて掃除機の音がおおきくなる
+O:少し遠くから 急に 掃除機の音
O:ほど近くから "チュチュチュ"と鳥の鳴き声
m:離れたところで "〜さん"とドアをノックする
O:近くを 車がゆっくり通り過ぎる
m:11時13分 掃除機が鳴り止んで部屋の中から何かを片付けるようなもの音
m+O:近くで 車のスライドドアが開き 閉められる
m:その車がバックする

m:遠くで カラスの鳴き声
O:すぐ脇の道を 人が走りながら通り過ぎる
m:通りの向こうで 男性の"おはようございます"、"ヤマト運輸の・・・"、"今日はラクラク・・・"
+O:少し遠くから おばさんと男性のやりとり

m:すぐわきの道を おばさんが2人会話しながら通り過ぎる
O:少し遠くの 掃除機の音は消えていた
m:離れたところから 再び男性の"おはようございます・・・"という声が響く

m:11時15分
m+O:掃除が再開される
m:部屋の中から中年夫婦の会話
O:すぐわきの道を 人が走りながら通り過ぎる
m:近くで 車のエンジンがかかる
O:少し遠くから 掃除機の音、女性の声
O:上空で カラスの鳴き声
m:目の前の生け垣で 小鳥のさえずり
O:近くから 鳥の鳴き声
m:小鳥が飛び去る

m:11時17分リスニング終了
 」

m:

「私は府中に住みつくと
時間のある時は周囲をあるきまわることにした
いたるところにケヤキの並木があって
その古いものは200年もたっているような木が多かった
ある日そんな道を歩いていると目の前に小高い丘があらわれた
その丘にのぼってみた。丘は雑木におおわれていて、
一番高いところには石の祠があり、
そこに立つと東から北の方へかけては人家が全然見えない
ただ、北のすぐ眼下のところは多磨墓地で墓石の白いのが目に入る
家はあっても林の中にかくれてしまっているのであろう、
あとで地図を見るとこの山が浅間山であった」
「私の日本地図 武蔵野・青梅」

宮本常一も、浅間山に、たびたび訪れていた様でした。
私は彼が撮った写真、また、当時の地図<WBに貼り出し>、これらに耳を傾けて<リスニングポーズ>、もう一度、浅間山に登ってみる事にした
ただし・・・1968年の浅間山に<WBに年号書き出し>

m:

「1968年5月28日夕刻 くもりのち晴れ、風あり、あたたかな日
近くで 鳥のさえずり
少し離れたところで 足音、農具のガチャガチャという音
辺り一帯 時々 風で麦がゆれる 樹々がゆれる
離れたところから 車が砂利道を走る音
遠くから 子供の遊び声 "じめじめしている"、"暗い"
どこからか ヘリコプターが近づく音
上空を けたたましい音をたてながらヘリが通過
近くで ヒバリのピュルリっという鳴き声
目の前で 湧き水の音
辺りで 虫がジィーっと鳴き始める
遠くから トランペットの音、アメリカ国歌吹奏、トランペットの吹奏が終わる
辺りで チリチリ・・・という虫の鳴き声
子供の遊び声はもうきこえない
虫の声
遠く離れたところを 電車が通過する
近くで カッコウの鳴き声」

私はリスニングを継続した・・・

performance view
excerpt from video: Lee Basford

m:1971年、府中市議会 会議録 第三回定例会 議員提出第14号議案 米軍府中基地から発着するヘリコプターによる騒音についての要望書提出について

「議長:提案理由の説明を求めます。26番矢部純一君
26番:この要望書は公害対策特別委員会でいろいろと検討した結果、やはり出した方がいいんじゃないか、ということであります。
これは米軍基地から朝晩ヘリコプターが飛び立つ事によって付近住民は非常に高い音響に悩まされておる。また小学校の周辺を飛ぶので
非常に勉学に差し支えておるということで、基地の中で位置を移動していただければいいんではないかということで、提案したわけであります。
飛ばすなということじゃございません、基地をかえろということでありますからよろしくお願いします
("賛成"と呼ぶ者あり)
議長:22番 吉田良作君
22番:それは多い時には日に十数回、2方面、あるいは3方面から飛んでくる。時には夜中2時ごろに飛んでくる。
この間のドルショック、ニクソン訪中のときには夜間非常に飛んで来たわけです。
そのような事で、周辺に住んでおられれる方々が夜の眠りをさまされるという様な事で、精神的な打撃が大きいわけでございます。
また爆風のために雨戸が倒れ老婆がけがをしたり、風圧のために物干の柱が根元から2本も折れたり、洗濯物がさおごと吹き上がっちゃう。
そのためになかなか安心してあそこにものを干せないという現状があるのです。
私たちは決してアメリカ軍を敵視するわけでもなければ、結局この地域の人達が安心して生活ができる、市民の悩みを一日も早く解決してほしい
こういう意味で提案するわけでございます。よろしくどうぞ。
議長:議長に一任を願います
("異議無し"と呼ぶ者あり)
議長:御異議無しと認め、本案は可決されました。」

m:私は府中のほうぼうで音を拾い<壁の画像群を指差す>、ページをめくり<身振り>、地図を見て<WB航空写真 貼り出し>、結局この場所に帰ってきた・・・
ただし・・・1941年のこの場所に<WBに年号書き出し>

m:

「1941年10月23日木曜日 晴れ、暖かい秋の日差し
10時30分リスニング開始
周囲から 鳥の鳴き声
近くで ボイラーの"ゴー"っという低い音、時々"シュー"っという蒸気の音
離れたところから 金属をたたく音、"キーン"という旋盤の音、機械の音
向こうの通りを トラックが通り過ぎる
遠くから 工事をする音
目の前を 若い男性が2人"イソオクタン値をなんとしても・・・"、"石炭はそろそろ・・・"
遠くで ドラム缶があたる鈍い音
10時35分 遠くで SLの汽笛
少し離れたところを トラックが砂利道を走り抜ける
10時38分 汽笛が鳴って、SLが近づいてくる
目の前を けたたましいブレーキの音をたてながらSLが通過
10時39分 SLが停車する
遠くで 男性の号令 "よし、おろせ"、"ガラガラ・・・"という物音
少し離れたところから トラックが砂利道を走り抜ける
遠くから 男性の"消火訓練・・・"という号令
辺りで 虫が"ジリリ ジリリ・・・"と鳴いている」

m:私はリスニングを続けた

m:

「その頃、陸軍燃料廠内の研究室の雰囲気は
軍の研究所とは思えないほど自由で上下の隔たりもなく
良く討論した、若い人の熱気であふれていた

しかし戦局が悪化するにつれ 廠内至る所に防空壕が築かれ
タコツボという個人用のを掘ったり、浅間山へ横穴を掘りに
何度も通ったが、かなり暑い時期だった

防空壕に退避する事が日課となり、
私にわりあてられたタコツボに一匹のヒキガエルが
先客として住みついていた。私はある種の安堵感を得て、
その先客に向かって
"どうかこれからは宜しく頼むよ"と語りかけた。」

m:その日のリスニングを終え、私はこの場所を離れ、美術館をあとにした

m:

「2012年12月24日月曜日 くもり、外は冷え冷えとしている
18時50分リスニング開始
近くのスピーカーから 音楽、セロニアス・モンク、ジャズのソロピアノ
上の方で 空調のカタカタという音
ドアがひらき 外から 誰か入ってくる
曲がかわる
18時51分 女性が店主と会話"コーヒーをいただきたんですけど"、店主"モカだったら・・・"会話は続く
流しの水の音 洗い物 お湯が沸く
目の前を 足音
氷がグラスにあたる音
横のテーブルで 若いカップルの会話が続く
皿にスプーンがあたる
コーヒー豆の"ザー"っという音
18時58分 すぐ横のテーブルで ビニール包装紙の"ガサガサ"という音
曲が変る
女性が"似合う"、"えー、嬉しい・・・" 会話は続く
コーヒー豆をひく音
19時リスニング終了」

performance view
excerpt from video: Lee Basford

m:<WBに2013年と書き込む>年が明けて、私はまた浅間山に登ってみる事にした
<少し歩く>

m+O+A(光門)


m:2013年1月13日日曜日 晴れ、微風、あたたかな冬の日 13時19分リスニング開始
A:遠くで "ぴよぴよ"と鳥が鳴いている
A:わりと遠くで 車の"ごぉー"っという音
m:遠くで ひよ鳥の"キィ"という鳴き声
O:頭上で "チュンチュン"という鳥のさえずり
A:すぐそばで ペンで丸をする音
m:丘の向こうから 男性の"オーイ"、"ヨッシャー"、金属バットでボールを打つ音
+O:丘のふもとで 野球をしている音、掛け声や打撃音
A:少し遠くで 服がこすれる音
A:すぐそばで ペンで書く音と服がこすれる音
A:少しはなれたところで おちばをふむ音
O:丘のふもとで "ボボボボボ"というバイクのエンジン音
A:遠くで バイクのエンジンの音

m:13時20分 目の前を 誰かが走り抜ける
+A:わりと近くで 人が走る音
m:離れたところから "ピュルリ"という鳥の鳴き声
A:とおくはなれたところから 子どもの声がひびいている
O:少し離れた場所から "ギー"という音
A:すぐそばで 人の呼吸
m:近くで 鳥の鳴き声
A:わりと近くで ゆっくり歩く音
A:少しはなれたところから 鳥の鳴き声

m:13時22分
m+A:少し離れたところから "おかあさーん、おかあさーん 見えない"という子供の声
+O:わろと近くから      "おかあさーん        見えない"という子供の声

A:わりととおくから "かんかんこつこつ"という音、野球をしている声
m:遠くで 車、バイク、時々トラックが通る音
+A:とおくで ときどき大きな車がとおる音
O:目の前で ペンを走らせる音
A:手元で 紙が折れる音
m:目の前で ボールペンを走らせる音
A:すぐそばで 服がこすれる音

m:13時25分
+A:上空を 飛行機がとおりすぎる音
+O:上空を ヘリコプターか飛行機が横切る音
+m:上空を 小型の飛行儀が ゆっくりと
m:13時26分 その音が遠ざかっていく

A:とおくから 人の話し声
O:自分の鼻をかく音
m:目の前で ペンを走らせる音
A:とおくで バイクの大きな音
m:服がこすれる音
A:とおくはなれたところから なにかの鳴き声
O:目の前で 頭をかく音
A:わりととおくで 車がとおる音
+m:近くで 鳥の鳴き声
A:上空で カラスの鳴き声
m:遠くで カラスの鳴き声

O:遠くから 落ち葉を踏む足音が近づいてくる
m:目の前を スズの音、足音が通り過ぎ、離れていく
+A:すぐそばで 人の足音

O:丘のふもとで "キーキーキー"という自動車のブレーキ音
A:とおくで"ききーっ"と車がとまる音
O:丘のふもとで "トゥクトゥクトゥク"という大型バイクの停車する音
A:すぐそばで せきこむおじさんとおばさんの声
+m:離れたところから カラスの鳴き声
O:頭上で "チュンチュン"という鳥の鳴き声

m:13時29分リスニング終了

A:浅間山ー美術館/朗読(文章_6_光門)
「あれは何だろうね、とはなしながら
私たちは、ぐねぐねと曲がった道を歩き、斜面を下りていく。
木の葉に紛れて、ところどころにどんぐりがおちている。
車が行きかう大きな道路を渡って、
住宅街の中をまっすぐ進むと雑木林に突き当たる。
少し行くと右手にはフェンスが張り巡らされていて、手が届きそうなところには
廃墟があり、立ち入り禁止の看板が立っている。
その向かいが美術館だ。」

m:この雑木林の辺りは「留保地」<WBに書き込む>と呼ばれている。

1974年11月8日、アメリカ国旗が降ろされ<身振り>、その翌年、75年、20万坪に及ぶ広大な土地が日本に返還され、
跡地利用を巡っては、いろいろ、国と地元の間で、事態錯綜があったものの、
<壁面の地図を指し示しつつ>その3分の1は国有地として自衛隊が使用する、またそこから5年ほどかけて、その、もう3分の1は、現在私たちがいるこの府中の森公園として整備されることが決定し、いまにいたるまで暫時整備されてきた。
残った3分の1はフェンスに閉ざされたまま「留保地」となった。米軍の通信施設が残されたまま。

1988年、国家的な戦略を背景にひとつのプランが留保地にたてらた。
<身振り、口述調>大型トラックが行き交い、建築資材が運ばれ、鉄筋がうちたてられ、コンクリートがながしこまれる、
国立衛生研究所、国家公務員宿舎、それに付随する様々な設備が建てられ、そこには人の声、暮らしの音、が響くはずだった。

この案は地元の反対をうけ、何もまとまらないまま、ただ時間だけがただ過ぎていき、結局、「留保地」は、元の姿、「武蔵野」<WBを指差す>、雑木林に還っていった。

私はその音に耳を傾ける<リスニングポーズ>

2013年1月24日、私は大國魂神社、参道脇にある、ひとつの資料館を訪れ、ある人に話をきいた、

<身振り、口述調>階段をあがる足音、あいさつをかわし、私は席につく。いろいろな資料が運ばれ、ページがめくる、私はそれらに耳を傾ける。

「最後にききたい事はないですか?」と問われ、あらかじめ用意しておいたメモを取り出し、忘れない様にと波線をひいた「留保地」<WBを指差す>の事を話題にした。

すると彼は、一枚の地図をとりだした<WBに貼り出し>
そして、彼は意外な事をはなしはじめる

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excerpt from video: Lee Basford

あのー、府中市には遺跡がたくさんあるんですけど、1975年頃、昭和50年くらいから遺跡調査がすすんでまして、いろいろ遺跡でてるんですけど、ここは手つかずだったんですよ

<H:インタビュー音源再生>
「そのあと、まぁ昭和50年以降調査は進んでき(て)天神町遺跡っていうまぁ旧石器とかそういう古い時代の遺跡が いくつかまぁ調査されて
えぇまぁこれがちょうどその川のあとなんですね、それがちょうどいま基地のぉ 跡の北側を通ってましてそこぉに恐らく遺跡があるんじゃないかつってまぁその衛生研がくるとかなっていうときにまぁ一時なんかたちいって調査をたの み、下見にいったんですね」

(mと録音が同時進行し、)
m:つまり・・・<橋本:インタビュー音源再生>
「で、まー地形的にもありそう、だっていうことで、ずっと下の方にもあるんですけどね(+m:彼は)、多摩の駅の方とか、まー恐らくその周りには(+m:この留保地には)その時代の 遺跡があるのは間違いない(+同時に、m:遺跡があるのは間違いない)」
m:と言った。

その昔、この辺りには古多摩川、が流れていた、その川床が窪地となって、周囲のわき水、時折の大雨、それらがたまってひとつの水の流れを作っていた
その流れはだいたいこの刑務所の辺りからはじまって、天神町のあたりを通る

そういえば、天神町で生まれ育ったあの人もその流れを視たと言っていた

<H:インタビュー音源再生>
「もうこの辺もね木がいっぱいあって、水が湧いてて、私の家のほうにこう、細い、川とも言えないけど、水が流れてたんですよ、谷になっててね、台風になると小川ができちゃう」

その流れは「留保地」を抜け、浅間山の南側をぬけていく
あの人がきいたといっていたその音もそうだろうか

<H:インタビュー音源再生>
「浅間山のここらへんから水が湧き出てるのはご存知ですか?そこを、その川がだから、そこから出てる小川がこの辺流れ立てたのは覚えています」

m:
私はそこのドアを出て、エントランスの方へ向かい、美術館を出て、すぐ右わきの道路をわたり、目の前にあるフェンスをのり越え、草むらを分け入り、右手に廃墟をみながら、奥へ奥へ、古びたコンクリートの道をいった。
雑木林へ入っていき、周囲を見渡して、耳を傾けた

m:

「遠くで(小金井街道の方)車の通る音、
すぐ後ろで、木から何か落ちる音
どこからか犬の鳴き声
上空を飛行機が通過する
風が通り抜ける、木々が揺れる
雨が降り始め、樹々にあたる、あたりの落ち葉にあたる
辺り一帯、鳥の鳴き声
<ゆっくりと身振り>
目の前に、水の流れ
2013年2月16日16時15分、リスニング終了」

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excerpt from video: Lee Basford

ありがとうございました。

他のパフォーマーを紹介します、左から小野田藍、光門映惠(みつかどあきえ)、オーディオ担当の橋本耕平、です。

最初に断りましたように、これら一切は正確を期するものではなく、私が聴いたままをお伝えしたままです。以上です。



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